先進医療と健康保険

健康保険制度を考える(その1)

世界に冠たる日本の健康保険制度が危機に瀕しています。
混合診療の解禁の是非、国民皆保険制度の是非についてアメリカの実状などを踏まえてこの場をお借りして意見を述べてみたいと思います。

先進医療のついた医療保険

最近、テレビのコマーシャルなどで先進医療のついた医療保険を目にします。
先進医療は健康保険が適用されないので、先進医療を受ける時には全額自己負担しなければなりません。
特にガン治療で、粒子線治療や重粒子線治療を受けるには300万円という高額な治療費がかかります。 これらの治療を受けたとき最高1000万円までの実費を負担してくれるというのですから、魅力的な保険かもしれません。 しかもこの先進医療部分の保険料は月100円程度というのですから驚きの安さです。

しかし残念ながら先進医療だけの保険はありません。医療保険に入って特約として付加するしかありませんので、月に数千円の負担はしなければなりません。

先進医療を受けるのに100円程度の負担ですむなら健康保険にあと100円プラスして、先進医療も健康保険の適用にしてほしいところです。

民間の医療保険では、健康状態や年齢によって加入に制限を設けているので、先進医療を健康保険に組み入れるともう少し高くなるかもしれません。 実際にどれぐらいの負担になるのか計算してみましょう。

中医協の調べでは、先進医療にかかった費用は平成20年度(平成20年7月〜平成21年6月)で約65.4億円です。日本の人口を1億2000万人とすると、一人あたりの平均負担額は54.5円です。

民間の医療保険に入るより安くなります。 民間の医療保険では健康状態や年齢で制限しているため、純保険料(保険の原価)はさらに安くなるでしょう。 保険会社としては十分儲かる保険といえます。


先進医療を健康保険に組み入れないのはなぜか

先進医療を健康保険に組み入れないのは健康保険の趣旨に反するからです。 日本の健康保険はフリーアクセスです。 フリーアクセスとは全国どこへ行っても同じような治療が同じ医療費負担で受けられるということです。 先進医療は特定の病院や診療所でしかできない治療がほとんどのため、健康保険制度に組み入れるわけにはいきません。 全国どこでも受けられるようになれば、先進医療も健康保険の適用になります。 毎年、何種類かは健康保険の適用になっているようです。

保険会社が先進医療保険を売り出すようになったのはなぜでしょうか? それは、先進医療が混合診療を認める治療のひとつだからです。 日本では混合診療は原則として認めていませんが先進医療などいくつかについては例外として認めています。

先進医療に混合診療が認められていなければ、先進医療を受けるときは先進医療でない部分の治療費についても全額自己負担(健康保険が使えない)しなければなりません。 これでは先進医療保険があっても誰も入ろうとしません。 先進医療に混合診療が認められてはじめて保険として売れるわけです。

保険会社は先進医療だけでなく、すべての治療に混合診療認めるよう希望しています。(混合診療の解禁) 保険会社だけでなく、製薬業界や医療機器メーカーなども混合診療解禁には賛成しているようです。 では混合診療を解禁すれば私たちにはメリットの方が多いのでしょうか?

混合診療解禁の賛否については次回以降に・・・。

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