混合診療解禁の是非

健康保険制度を考える
ー混合診療解禁の是非(1)

世界に冠たる日本の健康保険制度が危機に瀕しています。
混合診療の解禁の是非、国民皆保険制度の是非についてアメリカの実状などを踏まえてこの場をお借りして意見を述べてみたいと思います。

混合診療解禁の是非

混合診療とは、健康保険が使える治療と保険が使えない治療を併用することです。
現在は、混合診療が認められていない(一部認められています)ので、保険が使えない治療を行なうと保険が使える治療も全額自己負担しなければなりません。

たとえば、健康保険が使えない抗がん剤を使うとき、その他の費用(健康保険が使える治療)も全額自己負担しなければなりません。

これだけ聞くと、混合診療が解禁された方が消費者(患者)にとって得に思えます。

では、次の場合はどう思いますか?
「治療の方法には3種類あります。Aは治療費に100万円かかりますがほぼ100%完治するでしょう。Bは治療費が50万円です。80%の確率で完治するでしょう。Cは全額健康保険で治療するので費用は1万円です。完治する確率は50%です」

混合診療が解禁されれば、いずれはこのようなことが起こるでしょう。
そして、Cの治療だけを行なっている病院(診療所)はいずれ淘汰されてなくなってしまうでしょう。

日本の健康保険はフリーアクセス、現物支給という特徴があります。
フリーアクセスとは、全国どこの病院(診療所)に行っても同じような治療が同じ費用で受けられるということです。 また、現物支給なので3割の自己負担で治療が受けられます。 これらの特徴を守るためには、混合診療の解禁はなじまないと言えます。

混合診療が解禁されると混合診療を積極的に取り入れた方が儲かります。 健康保険だけの治療を希望する患者は、治療を後回しにされることも充分考えられます。

私たちは、混合診療の解禁ではなく、健康保険が使えない治療を早く健康保険が使える治療に変えるよう働きかけることではないでしょうか。

混合診療解禁を望んでいるのは誰でしょうか?
医療機器メーカー、製薬業界、保険会社です。
混合診療が解禁されれば、自由診療(健康保険が使えない診療)を受けるときに支払われる保険を売り出すことができます。 今も、先進医療保険がありますがこれをもっと拡大した保険が売れることになります。 そして、この保険に入っていなければ治療をしてくれない病院(診療所)が出現するでしょう(保険に入っていないと治療費を払ってくれない危険性があるため)。 アメリカナイズして行く医療が目に見えます。
「負担する費用によって治療の内容が変わるのは当然」という考え方が常識になるでしょう。

つづく・・・。

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